(1) 形状設計にパラダイムシフトをもたらす流体制御に関する研究

Fig. 1 Our project for product design innovation

流体設計は,航空機や自動車などの輸送機器,タービンなどを利用する動力機械,さらにはエアコンからPC冷却といった身近な生活機器に至るまであらゆるところで必要とされている.航空機の翼設計からわかるように,形状の工夫による性能向上は限界に近づきつつある.筆者らは,多くの空力設計がそのような状況にあると考え,空力設計を根本から変える技術の候補として小型/マイクロデバイスによる流れ制御に着目した.失速から想像されるように,急激な性能低下には流れの剥離現象が関与している場合が多い.剥離制御については,すでに多くの先行研究が存在するが,ここでは,単に境界層や剥離の制御による空力性能向上(短期的成果)だけでなく,これらを上手に使うことで「形状を工夫する流体設計」から「翼型の工夫のいらない流体設計」へのパラダイムシフト実現を目指している.具体的には,「(多数の)マイクロデバイスを動的に制御することで形状工夫を圧倒する性能の実現」が可能であることを実証することに主眼を置いている.研究意図を模式的に示したものをFig. 1に示す.もちろん,実利用では周辺機器や環境なども意識しなければならない.空力以外の課題も認識しつつ,まずは空力的な観点での実現性を示すことで,産業界とも連携し周辺の課題を1つ1つ解決していくことを想定して研究を進めている

(a) DBD-PA off

(b) DBD-PA on

Fig. 2 Flow separation control with DBD-PA

広く用いられているDBDプラズマアクチュエータは二枚の薄い電極板とその間に挟まれた誘電体層よりなる.上側の電極は気流にさらされ,もう一方の電極は誘電体によって物体表面に埋め込まれており気流には直接接触しない.一般に,厚さは全体で数百マイクロメートル程度である.この電極間に高い交流電圧を印加することによって,上側電極と誘電体に挟まれた部分に放電が生じ,上側電極から下側電極方向への流れが生ずる.Fig. 2に研究室の小型風洞試験における交流電圧を印加による流れ変化を示す.Fig. 2aがアクチュエータなしの(電圧を印加しない)場合,Fig. 2bが電圧を印加した場合の流れである.誘起される流れは最大でも数メートル/秒程度であるが,流れの非線形性を上手似利用することで,失速状態にある翼型周りの流れが翼面に付着するようになる.

DBDプラズマアクチュエータが流体制御デバイスとして優れているのは下記の特徴を有するからである

研究の概要については以下の論文を参照されたい.

Fujii, K., “Three Flow Features behind the Flow Control Authority of DBD Plasma Actuator”, Applied Science, 8 (4), 546, April 2018; DOI:10.3390/app8040546.
Fujii, K., “High-performance computing-based exploration of flow control with micro devices,” Philosophical Transaction A, Vol.372, pp.1471-2962 2014.; DOI: 10.1098/rsta.2013.0326.

また,最近の論文は以下のようである.

D. Chen, K. Asada, S. Sekimoto, K. Fujii, and H. Nishida,“A high-fidelity body-force modelling approach for plasma-based flow control simulations”, Physics of Fluids, accepted for publication, Feb. 2021.
T. Abe, K. Asada, S. Sekimoto, K. Fukudome, H. Mamori, T. Tatsukawa, K. Fujii, and M. Yamamoto, “Computational Study of Wing Tip Effect for the Flow Control Authority of DBD Plasma Actuator, AIAA Journal, Vol. 59, No. 1, pp. 104-117 2021; doi: doi/abs/10.2514/1.J059706. S. Shimomura, S. Sekimoto, A. Oyama, K. Fujii, H. Nishida, “Closed-Loop Flow Separation Control Utilizing the Deep Q-Network over Airfoill”, AIAA Journal, Vol. 58, No. 10, pp. 4243–4259, 2020; https://doi.org/10.2514/1.J059254.
S. Sekimoto, K. Fujii, S. Hosokawa, H. Akamatsu, “Flow-control Capability of Electronic-substrate-sized Power Supply for a Plasma Actuator”, Sensors & Actuators: A Physical, Elsevier, Vol. 306, No. 1, May 2020, 11951, https://doi.org/10.1016/j.sna.2020.111951.

個別研究の詳細は,以下にある学術成果の論文リストを参照されたい.

achievement_en.html